さっぱりさみしい
雨上がり

額縁があれば絵になる 

諦めたように日が差して
名残のしずくを受ける頬
たしかに君はカタツムリ
野は清ら、気まずい傘袋
いいえ花とて涙をこぼす
ながめせしまに増えるの
幾度でも踏むみずたまり
明るい色の雨具を持って
めそめそしながら歩こう
あすは来ずとも雨は止む
凱旋の旗に色はなくとも
リボンのような風とゆく

(あなたのための雨上がり)
蛹のなかのきみはなにいろ
今にも飛び立てそうなのに
わたしのゆびを忘れなさい
一度や二度やぶれていても
西をめざすか虹を追うのか
シロップでは生きられない
天日でも陰でも心ゆくまで
この先傷負うばかりの翅で
どこへでも行け生きてくれ
蜘蛛の巣だらけの浄土でも

(バイバイ、わたしのアゲハチョウ)
なけなしの野性が吼える
No more 温度差
デモとダッテの二重螺旋
もうちょっとだけ綺麗になりたい
髪の話で日が暮れる
がっかりしても笑うのね
水鏡は未来をうつす
のっけから泥泥
17が素数かどうかも分からないくせに
さよならのような声で
いつかなんて待ってられない

(この世で最強の生き物のはずなのに)
かさかさおばけの怪
夜降る雨は嘘をついてる
うとうとくじらの夢占い
瓶底の虹を舐める
のろのろぐもの野点(のだて)会
オリオン座だけは分かります同盟

(火曜日のサスペンス劇場)
輪切りの太陽
雷の砂糖漬け
氷柱のソルベ
天気雨ソーダ
いちご味の泥
類なき綿雲雨
野分のサラダ
雨雲の味噌汁
名残りの春雨
台風サイダー
波浪ショコラ
高気圧するめ
小鳥用の朝靄
うららか虹茶

(孤高のグルメ)
あなたの趣味じゃないハンカチ
ランドマークも無粋
いけ好かないそよ風
残念残酷なお知らせ
らしくないねこの靴
しのびしのんで色なきうつし世
望んで手放した色覚
そらはただまぶしく
来世には七いろの虹
ではまた次の雨上がりにここで
夜の色した影を踏む
怪しからぬつまさき
レモンを水色に塗る
ばらばらにわらって

(泣き腫らした目にはただただ眩しくとも)
葬列じみて雲はゆく
飲み水とは異なる透明
約束がわりの傘一本
律儀に濡れる白い肩
カスタネットで雨だれを刻む
畳むのがいちばん怖い
はぐらかして彩雲
知らない匂いになった街
ランプの精は頭が固い
長靴に棲んじゃってて出掛けられない
石でもないのに投げないで

(お約束)
マドラーとストローくらい違う
ガラスは割れてしまうのに
イヤリング片方ばかり
モールス信号友達
ノーチラスの浮上
デリシャス前線北上中
シリーズ最高のまばたきね
タランチュラは水面を去りゆく

(むかしはものをおもはざりけり)
美しいだけがはなかい
赤白黒しかなかった世から
手ぶらで行って帰れる地獄
眠らなければ悪夢は見ない
「あなたのことなんかもう誰も恨んでいないのに」
湿った鍵
悪夢請負人
水玉模様の氷
わけありのやさしさ
お役御免のてるてる坊主
塗り絵にすればこの目も黒いはず‬
よそよそしい傘
骨の重さを持て余す
忘れないでとべたつくからだ
立ちのぼるいのちの匂い
戸惑う空を踏まぬよう

虹の色が奇数であったために

いっそ雷でも落ちていれば

たのしいたのしいぬかるみぢごく

雲は緩衝に向かない

ガリレオ落下傘部隊

雨眠するものたち

愛がふたりを別つまで
なかないでナイチンゲール
束ねた絹糸をくしけずり
呑み干した杯が埋まる庭で
今でなくてもよかった
夏が終わるねフラミンゴ
井戸は枯れました心は溢れました
貴方がいた曇天
メメント・モリを頚椎と編む
明日がそぼ降る軒先
瓦斯燈の天辺で月を呼ぶ
陸地をうまくたどってねパンプキン

(最愛の妹による寄稿)
梅雨明けはさよならじゃないまた会おうあなたのきみの傘の下にて


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